「ママは、悠ちゃんを1度、捨てた。」と、突然、笑みをこぼす悠季がいった。
「じゃあ、今は?」と、笑みで問う未夢。
「ママの気分で、悠ちゃんを拾った。」と、笑う。

上記の言葉を悠季が言ったのは、再度、共に暮らして5年が刻まれた頃だった。
悠季の言葉に頷く未夢(母)は『やっと、悠季(子)の本音が聞けた』と、ホッとした。


未夢は24歳の時に、良太(第一子)を出産し間もなく母子2人の生活が始まった。(子の父親は暴力を振る人だった、未夢は良太と共に逃げた)。そんな未夢にとって、良太は生きるための源となり、何でも話せる親子関係を築く。未夢にとって良太の存在は欠かせない。2人で刻む時は、喧嘩したり励まし合ったり、時には、未夢(母)が良太(子)に甘えたりと時を重ねて14年。

そんな2人の家庭に、突然、偽善(当時40歳)がやって来た。
どうやら未夢の仕事帰りを狙って後を付いてきたらしい・・・

「借金して返済できず、家賃代も滞納した。借りていた部屋を追い出された。住むところが無いから入れてくれ。」と、未夢の顔を見るなり偽善が言った、渋々、部屋の中へ入れると「何でアイツがいるんだ、ここは、母さんと俺の家だろう。」と、良太が怒る。「お金がないんだって、住んでいたところも追い出されたんだって・・、」と、下を向きぼやく未夢。

断り切れない未夢の性格を知る偽善は、未夢と良太の家に入り込むと、徐々に暴力で支配し始める。
未夢は『出て行け!』と、声に出来ない言葉を噛みしめて時を流す・・・妊娠、そして、出産

この時の赤ちゃんが『悠季』・・・赤ちゃんが生まれても偽善の暴力は続く。


未夢は「暴力は止めて」と、偽善に繰り返し訴え続けていた、が、
偽善は「暴力は振るっていない、ただのじゃれ合い、からかい、楽しく行こう。」と、繰り返す。

そんな偽善に振り回される未夢は、今日も投げつけられて壊れた物の残骸を片付けていた、
そのとき、
「昨日も暴れたんだぁ、ヒデェーなぁ、 なんだ、この部屋。」と、笑う良太。
「もう、片付けるの、やんなっちゃったぁ・・。」下を向いたまま未夢がささやく。

「なっ、“別れたい” って、考えているだろう。  (よくご存じで、と未夢がニコッ) 
 もう少し我慢しないか、俺、こう見えても、寂しかったんだ。
 母さんが仕事へ行って、帰ってくるまで、俺、1人、だったろう。
 そんな寂しい思いを悠季にさせたくない。だから、もう少し我慢しろよ、なっ。

 それに・・、(#^.^#) 友だちは『母親が家に居るのはヤダ』と、言うけれど、
 俺は、母さんが家にいてくれるの、嬉しいんだ、なっ、だから、なっ。」

バイトから戻った良太は、笑みを浮かべながら未夢をなだめる。


そんな良太に支えられて4人の生活が続く、その良太が18歳の誕生日を目前にバイク事故にてこの世を去った、すると言うまでも無く未夢の心も死んだ。そんな未夢に対して「いつまで泣いている」とヘラヘラと言い寄る偽善。『もうイヤ!』と噛みしめる未夢が「離婚」を要求したが、偽善は『絶対拒否』。それでも譲らない未夢に『離婚するなら悠季を渡さない』と、偽善は 、未夢を脅迫し悠季を連れ去る。その姿は『悠季がいれば未夢は戻る』と、語っていた。

離婚当時、悠季2歳と偽善43歳は岩手へ、未夢42歳は慎也36歳と長野へ。


良太の死を受け入れられない未夢は『死にたい』と自分を追い込む、が『悠季』の存在がその道を立つ。頭の中では “死” を意識する、その一方で幼少の頃の未夢が悠季に重なる。(未夢の親は、離婚し再婚するが自殺の道を選び、当時6歳の未夢は親を失い住む家も失った、その当時の苦い思い出が死への道を阻む、悠季には同じ思いを味合わせたくない・・と)そんな未夢に『死ぬなよ』と慎也の一言も足止めする。また慎也は『未夢が自分を取り戻し悠季に会いに行く』サポートをする。

未夢は、悠季と別れて1ヶ月後の3歳の誕生日に再会。


未夢は『悠季を手放した』事への罪悪感を強く持ち、心臓を爆発させながら悠季が住む岩手へ向かう、すると僅か1ヶ月の時は悠季を別人に変えた。未夢の目の前に表れた悠季は、一回り小さくなり視線は空を見つめて、ただ「ママ」「ママ」と、小さな声で繰り返すだけだった、見るからに『心、ここにあらず』状態の悠季。そんな悠季を抱き上げた未夢の腕は胸は、更なる悠季の異常さに気付く、抱いているのに悠季の温もりも重みも何も伝わってこない、まるで雲でも抱いているかのように、抱きしめると消えてしまう・・、手を放せば空高く舞い上がってしまう・・、そんな不安だけを未夢に伝えた悠季、遠い目の悠季を記憶に残した未夢は長野へ帰った。


悠季の異常さが気になる未夢は「引き取りたい」と、偽善に願い出るが「渡さない」と笑みをこぼして背を向く。諦めきれない未夢は、偽善に引き取りたい旨を書き連ねた手紙、悠季には本や衣類などを毎月送り続けた。悠季が気になるのに、良太を失った現実を受け入れられず、強い罪悪感と悲痛さに溺れて引きこもりを強くする。そんな未夢に「バイク運転したいだろう、免許取れ、そして、乗れ」と、引きこもる未夢を導く慎也。

止まらない涙と共にバイクを乗り回す未夢。
そんな時を刻み再び悠季に会いに行く。

悠季4歳「ママと暮らす、ママのお家へ行く」と、泣きながら必死に未夢に訴える。

この時の悠季の言葉と行動が、未夢を動かす、
偽善との話し合いの場を設けて貰ったが『話し合いにならず』、
親権移動の裁判を起こしたが『敗訴』した。

この結果は、正当な道が断たれた事を意味していた。

それでも悠季の異常さが気になる未夢は、先の不安を予測しながらも『法に背く』道を選んだ。偽善の目を盗んで悠季を連れ出す、この行動は、精神的にも大きな罪を抱え込み、未夢自身も常に不安と背中合わせ、気持ちは落ち着くことが出来ずに情緒不安定を誘発させた。悠季は多動という問題児の烙印を押されて友だちを失う、すると、もう1人の自分を作り上げた。

そんな悠季の行動は首を傾けたくなる行動が目に付いた。その中の1つに、一番、無防備になる夜の睡眠時がある、悠季が眠る時間は『大人たちが眠りに就いた後』、寝姿は『正座したまま前に倒れた姿』 丸まった状態で寝ていた。この当時の悠季は、小さな音にも敏感に反応し、飛び起きると「ママ-、ママ-」と泣いた。

『直ぐに飛び起きられる』と、語る寝姿は恐怖を表し
「いつ物が飛んでくるのか」「いつ殴られるのか」と、その恐怖から身を守るための『防御策』だ。

偽善から離れて2年が過ぎると、悠季の口から少しずつ岩手での生活が語られた。その内容は、偽善が『躾と称した暴力』の実態だった。“物を投げつける”、“怒鳴る”、“殴る”、は、当然のように繰り返し、時には、子猫の死骸をコタツに置き、悠季に『次は、お前だ』と言葉では語らない『脅迫』までも埋め込んだ。そんな偽善は、悠季から自由を奪い悠季の命までも脅かし続けていた

悠季は偽善の暴力から逃げて、偽善の実家へ逃げ込んだが、実家でも「暴力では無く躾」と見なし偽善の元へ戻す。そんな悠季は『いつもよりも酷い暴力に晒された』。

子共に暴力を振るう父親なのに、世間の目は『子煩悩で、優しいお父さん』の異名が付く。それは、悠季が通う保育園でも、病院でも、同じように偽善は高評価だ。


偽善から離れて2年・3年の時が過ぎたのに・・・、悠季の心に住み着く恐怖は、拭い取れない
そんな自分の心に疑問を持つ悠季は、泣きながら、怯えながら、自分(心)を見つめて、
自分の意思で、ひとつ、ひとつ、トラウマ(恐怖)と向き合い、克服していく。

子どもは必死に生きる道を探す。
そんな子どもに手を差し伸べるのは、大人である。





悠季の話を、ただ聞いていた未夢なのに、その恐怖は、未夢の意識を奪い身体を硬直させた。
未夢は今でも思う「生きていてくれて、ほんとうにありがとう」と「連れてきて、良かった」と。

何度も何度も噛みしめる・・、 悠季、3~8歳に歩んだ壮絶な時間

親の身勝手な行動が、子どもの人生までも狂わせる。
ごめんなさい・・、深く、深く、反省しています、_(._.)_<(_ _)>



未夢の願い『子供の思い』『子どもの意思』ほんの少しでも、大人たちに、親に・・届くといいなぁ。

子どもの命を守れるのは、私は親だと考えています。
その理由は、子どもと常に同じ時間を刻んでいるのだから、親が守らず誰が守る。

子どもへの虐待を止めたいのに、止められない親、その思いを強く持っていたならば、『あなたは、必ず、止めることが出来ます。』理由は、自分の行いを振り返ることが出来る人は、自分の心に、自分の意思(考え)を吹き込むことが出来るからです。

「子育てとは何?」  
「躾とは何?」  
「躾と称する暴力とは、いったい何?」
そして「子供を救えるのは・・誰?」


                        一緒に考えて頂けると幸いです。_(._.)_